ここが Hen!

(第46話 黄身返し)


 江戸時代(1785)に書かれた「万宝料理秘密箱」という料理書の中に『卵百珍』として103種類の卵料理が紹介されているそうである.その中に「地卵の新しきを針にて頭の方へ一寸ばかり穴をあけ、糠(ぬか)味噌へ三日ほどつけおきて煎貫にすれば中身の黄身が外へなり白身が中へ入いりて,是を黄身返しといふ」と呼ばれる秘術‘黄身返し’がある.

 テレビで見たのだが,有精卵を孵卵器で数日間温めた後、ストッキングの中に卵を入れて回転させると,遠心力の力で黄身の周りの膜が破れ、この卵をお湯の中に入れて転がしながら温めると黄身と白身が反転したゆで卵になるそうである.

 とにもかくにも江戸時代には酔狂の人(暇人)が多く,よくぞこんな秘伝を考えついたものだと感心させられた.ここまでの秘術はないのだが,『豆腐百珍』の中にも江戸の料理人達が編み出したこだわり料理が多く書かれ,江戸時代の食文化の高さが分かる.

 ついでなので,江戸時代にできたHenな記録を少し紹介する.江戸の風流人,狂歌で有名な大田蜀山人が食いくらべを催した.最近の大食いとも似たようなものもあるが,江戸では自らの意思で命をかけて挑戦した.まず,醤油であるが,1升飲んだ男は半年寝込み,2升飲んだ男が急死した.1819年(文化2年)の記録では1斗(=18l)飲んで1等になったなど酒豪は生きていたことから,醤油の瓶にこそ「飲み過ぎに注意」のマークが必要ではないでしょうか(笑い).ゴマ油は7合飲んで3日後に死亡,百匁ローソクは3本で,吐き気とめまい,泥は茶碗27杯食べて急死した.


 

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