皆既日食

(本質を見抜く力 第16話)


 今回は,ちょっと高度?な笑い話から入る.2009年3月10日か11日は満月であった.その月を見ながら妻と犬の散歩をしていた時の会話

私「日食より月食の方が多いって知っている?」

妻「そりゃそうでしょう.明日からも月食が始まるのでしょう?」

私「?????」

 笑い話にならなかった人が多かった????

 2009年7月22日に,日本のトカラ列島を中心に上海などでも見られる皆既日食は,1963年7月21日の北海道東部で見られた皆既日食以来、日本では実に46年ぶりである.私が小学校6年生のとき20世紀最後の皆既日食ということで,日本中で大騒ぎになり,直接太陽を見ても目を痛めないようにガラス板にロウソクですすを付けた遮光板,あるいは下敷きで観察したつもりの皆既日食は,実は九州では皆既日食ではなく,部分日食であった.小学校の先生の指導だったと思うが,私が特別に理科が好きだった訳ではなく,近所のみんなも集まって見ていた.

 次に日食で覚えがあるのは,1995年か1996年のある日,マレーシアに出かけるため,車に乗ろうと家から庭に出て何かおかしいなと空を見たら部分日食だった.その時は,「そう言えばテレビでも言っていたなあ」と思い出した程度の認識だったので,かえって新鮮な驚きがあった.いつもより暗くなっただけではなく,木漏れ日の形が,面白かったのを覚えている.また,その後に,タイのチェンマイで現地の人と話をしていた時,恐らく日本で見たその日食はバンコクで皆既か金冠日食であったが,期待したほど暗くならなかったと言っていた.

 一方,2008年4月から上海で小学校の理科の先生をしている娘は,2008年8月1日と2009年7月22日の2回も皆既日食を見ることになる.皆既日食が同じ所でそんなにあるはずはないのにと不思議に思い,調べてみたら娘は信じられないようなラッキーガールであった.何と21世紀に上海で見られる皆既月食は2回だけで,それが2008,2009年に続けてあることが分かった.さらに,22世紀にも23世紀にも見られず,皆既日食とまでは言わず,金環食を含めても次に上海で見られるのは2309年で,過去にさかのぼっても,1575年5月10日以来なので,750年間に2回しか見られない.このように,月食と比べ日食は極めて珍しい自然現象で,私は60年近く生きているのに皆既日食を見たことがなく,それを娘は理科の先生として上海に滞在する2年間に奇跡的に居ながら見れるということである.子供たちに,月食は満月,日食は新月の時に起きることを教えたら太陽と地球と月との関係が興味を持って理解できると思う.上海も日本や欧米のツアーが組まれている.

 屋久島やトカラ列島では5年ほど前から予約が入っており,2009年になって宿泊施設を探してもキャンセル待ちですごい競争になっているらしい.卒業生のK君からは,会うたびに「(彼の操縦する)飛行機でどこかに行きませんか」とお誘いをかけられており,屋久島なら熊本空港から1時間ぐらいで行けるので日帰りもできることに気付いた.その内,一度は飛行機に乗せてもらおうと思っていたし,どうせなら日本中で他の人が考えない,できないことをするのも面白いと思って飛行機による皆既日食ツアーを企画している.屋久島はトカラ列島より雲が多いので敬遠している人もいる様だが,飛行機なら様子を見て曇っている時には雲の上から観測もできる.学生時代,7月下旬に屋久島にはよく登っていた.梅雨明けが本土より早く,月に35日雨が降ると言っている割りに,天気には恵まれていた.宿泊も,波野の家に泊まったことのある娘の友達の家が屋久島にあり,K君の取り引きの農家もあるので泊まる所も確保できそうである.

 因みに東京で皆既日食が最後に見られたのは1524年7月31日,次に見られるのが2762年8月12日,その間には一度もない.普通なら一生に一回も見られない天体ショーを見逃す手はない.ちょっと贅沢だが,上海と屋久島,親子で皆既日食を見るのを楽しみにしている.

P.S. 2009年7月22日:まさか,今年に限って7月22日になっても梅雨が明けていないとは思わなかった.21日にセスナ機5機で硫黄島に行く予定(屋久島は駐機場が抽選で外れた)であったが,熊本は雨で,さらにその後梅雨前線が南下し,鹿児島付近に停滞するかもしれないと言うことで,取り止めになった.実際,22日の早朝まで天気予報の通り熊本地方は時々雷のなる天気で,午前中は,弟たちのいる大阪,甲府を含む日本中が曇りか雨のところが多かったようである.娘のいる上海の小学校では全校日食観察をしたが,「曇りときどき雨で,まったく太陽は顔を見せなかった」そうである.それでも流石皆既日食の上海は「本当に夜が訪れた5分間で,みんな大騒ぎでした!!! 雲に隠れていたせいかもしれませんが、姿は見えなかったけど感動でした!」というメールが届いた.私は,熊本市内が晴れていても雨が降っている大学から学生を連れて外輪山の上にある大観峰に行った.ここも,ガスっていて太陽が全く見えず,途中晴れ間が覗いていたところに引き返して観察した.雲に隠れたり,薄い雲で見えたりだったが,最初に見えた時にはすでに三日月のような太陽で,感動の時間が過ごせた.

<10時57分18秒,Jul. 22, 2009:熊本で最も欠けている時間なので92%の状態のはずである.曇り空だったので木漏れ日は見られなかった.明るさは,それほど暗くなかった.>

<撮影風景:カメラを構えていたらだんだん人が増えてきて感動の声が聞かれた.鳥は普段より鳴いていたようにも思う.>

観察する時の注意点

1)遮光板をしていても網膜がやられるので続けて2分以上は見ないようにしましょう.

1)欠け始め(9時37分)から皆既(10時57分)になるまで1時間20分もあるのでゆっくり楽しみましょう!

1)皆既になっても暗さに目が慣れてくるのでそれほど暗く感じないかも知れません.黄昏時か,厚い雲がかかっている程度ですので必要以上に期待しないようにしましょう.

1)鳥や動物にも注意を払いましょう.

1)木漏れ日やガラスで反射したものの観察もしましょう.

 

21世紀に日本で見られる日食

皆既食

2035年9月2日 皆既食・関東地方付近

2063年8月24日 皆既食・津軽海峡付近

金環食

2012年5月20日 金環食・関東,紀伊半島,四国,宮崎,鹿児島

2030年6月1日 金環食・北海道

2041年10月25日 金環食・中部地方付近

2074年1月27日 金環食・鹿児島

2085年6月22日 金環食・沖縄本島

2085年6月22日 金環食・四国,中国地方付近

日食四方山話(案外知られていない日食の話)

1)日食は,西から東へ移動する.

地球が西から東へ自転しているので太陽も月も東から西へ回るが,太陽に追い越されるので月の陰は西から東へ移動する.

2)皆既食になる時と金環食になる時がある.

距離が400倍も違うので地球から見た太陽の大きさ(1.989×10の30乗 Kg )と月の大きさがほぼ同じである.ただし,地球から見た太陽の大きさは,大きい時と小さい時とで3%,月の大きさは10%も異なる.このように,周期的に変わる太陽と月の見た目の大きさの違いが異なるのは,地球の公転はほぼ円形で,月の公転は楕円形だからである.この二つのことから太陽,月,地球が直線的に並んでも皆既食になる時と金環食になる時がある.

 

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