有機農業

はじめに

 農林省は,平成5年4月から有機農産物等に係る青果物等特別表示の基準を公布し,平成8年10月には「有機農産物及び特別栽培農産物の表示ガイドライン」に改正した.しかし,いずれにしても罰則のないガイドラインであったため,農家や流通業者の誤解などのため基準に合わない有機農産物が出回っていました.一方,コーデックス委員会(WTOとFAOの合同委員会)の決定事項を受け,1999年9月28日付けで有機食品の日本農林規格が公表され,2000年4月1日から施行されました.それまで表現が曖昧だった有機農産物として用いてもよい肥料農薬のリストが公表される一方,第3者認証機関による認定を受けないで有機農産物の表示を用いることが罰則の対象になることからお米やお茶その他無農薬で作れる農産物,大豆など輸入農産物を加工した食品以外の農産物から有機の名が消えていくことが心配されています.
 このホームページでは,有機肥料,無農薬栽培および省エネ栽培の具体的技術についてまとめてみました.
 


 日本は、工業など他の分野と同様、農業技術および農学でもレベルの高い国の一つであることは一般にあまり知られていない。これは、自給率の高いコメでさえ価格が高く,従って日本の農業生産物の国際競争力が弱いことが、農業技術の低さと結びつけて考えられるためである。しかし、園芸作物など日本の農業は、非常に集約的で、単位面積当り高収入をあげる技術と高品質のものを周年的に生産する技術においてオランダやイスラエルと共に世界でも最も優れている農業の一つである。
 一方、そのような近代農業の技術には、機械化や暖房などたくさんのエネルギーを消耗してなされているものや、農薬漬けなどとよばれているものなど環境を汚すものが多い。広い面積を耕作する技術、土地生産性を上げる技術および高品質のものを生産する技術は、農家収入と結びついて、これまで発達してきた。さらにここで主に取り上げる省エネ技術と無(低)農薬栽培技術は、収入と結びつくだけでなく、環境にやさしい技術に、また、食物の使命である人の健康にやさしい技術に絞った。これからも日本が農業技術大国であるためには、農家、研究者,行政および消費者が一体となって収益性一辺倒の技術から、環境にも気を配った技術の開発へも真剣に取り組むべきと考える。
 私の住む熊本県は、全国でも有数の農業県である。阿蘇のカルデラなどに広がる水田、肥後の赤牛を代表とする畜産、日本一の生産を誇る甘夏ミカンや温州ミカン、植木、八代、玉名など、西南暖地に広がるスイカやメロン、トマトなどの施設園芸、大津などの畑作地帯、阿蘇の外輪山を利用した高冷地野菜など多くの分野において、熊本県の農業は、日本でも上位に入る。この熊本県から環境にやさしい農業が生まれ、育ち、日本そして世界の農業を引っ張っていくことを期待したい。
 ここでは、筆者の専門分野である園芸を中心に省エネと無(低)農薬栽培のための新しい技術について述べ、それらの考え方について考察する。