四季と植物

(園芸四方山話第3話)


 日本は,世界の中でも四季の変化の最も美しい国である.逆に,熱帯地方は四季の移り変わりがなく,従って,植物にも四季の変化はないものと一般に考えられている.事実,熱帯地方の高原では一本のリンゴの木にツポミや花,あるいは果実が同時についている.また,研究者の中には四季咲き性の品種を作るため,目的の植物と同属で熱帯原産の植物を用いて育種をする人もいる.

 しかし,ボインセチアなどのように短日植物(日長がある時間より短くなると花芽をつける植物)の多い熱帯値物は,温帯地方では冬咲きになるものが多い.一方,熱帯地方で同一樹種の木は,大まかに見て同じ地方であれば,開花がそろうものが多い.特に,カポック(パンヤ)やゴールデン・シャワーのように落葉性の花木では,落葉,開花,結実の周期が,株内だけでなく株間でもよくそろっているという印象を受けた.果樹でも同様に,収穫できる月は地域によって異なるが,毎年決まっている.一年中,マンゴーやドリアン,タマリンドなどの熱帯果実が手に入るわけではない.

 このように見てくると,熱帯には季節がない,あるいは熱帯植物は四季咲きであり,温帯植物は一季咲きである,ということに疑問が持たれる.季節風により,はっきりした雨期乾期がもたらされる地域だけではなく,熱帯多雨林においても年間期リズムを持つ植物もある.マレーシアの多雨林で,五年間,植物の季節性を調査した研究者がいる.年に二,三回結実し,その時期も年によって異なる植物や,いつ開花するか分からないようなほとんど季節性のない植物の中にあって,五年間かかさず年一回,四月ごろに落葉している植物が報告されている.私自身,パプア・ニューギニアにおいて,マレーシア・シャクナゲの開花にも明らかな季節性のあることに気付いた.後で知ったが文献にもそれぞれのシャクナゲの開花月が明示してあった.

 これらのことは,リンゴやキクなどの温帯原産の植物は,極端な温度や日長の変化でしか季節の変化をとらえられないのに対し,熱帯植物の中には,季節の変化に鈍感なもの,あるいは乾燥に対して反応するものだけでなく,微妙な温度や日長の違いでも季節を区別できるものもあることを意味している.明らかな春夏秋冬の季節のない熱帯で植物の示す年周期リズムは,これからの研究課題である.


 

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