第14話 子離れ
人のことはあまり言えないが,いつまでも子離れ,親離れのできない親子が増えて来たという.昔のように子供の数の多かった親は,下の子の面倒を見ないといけないので上の子供の面倒まであまり見ることができなかった.まだまだ甘えたいのに下の子ばかり世話をする母親に対して4,5歳の子には第一反抗期があった.さらに中学校くらいになると子供の方から独立心が芽生えて第2反抗期となる.しかし,最近では,少子化になり,友達のような親子関係と言われる優しい両親との蜜月が長く続くようになっているそうである.
この点についてもニワトリの行動から学ぶべきものがある.子供の面倒をよく見るチャボでは,ヒナが孵(かえ)るとメス親は本当に一生懸命面倒を見る.カラスや猫など外敵をいつも注意しながら好物のヤスデやミミズなど地中にいる虫を一生懸命探し,自分は食べず,ヒナ達に食べさせる.それは正に親の鏡で,子供を虐待する親に見せたいほどである.
しかし,ヒナに羽が生えてある程度大きくなると突然メス親は子離れする.前の日まであれほど献身的に面倒を見ていたヒナを追いかけ回すのである.決してヒナ達から親離れするのではない.ヒナ達は驚いて逃げ回るが,しばらくすると何かの勘違いではないかと親に何度か近づく.その時もメス親は容赦しない.もはや餌をもらいに近づこうとしなくなるまで突っつき,追いかけ回す.餌もメス親は元のように自分優先で食べるようになる.そして,それまで拒み続けていたオスを再び受け入れ,卵を産むようになる.子離れは次の子供を産むために必要な儀式である.ニワトリの場合そこまではしないが,自然界であれば,本当の野生であれば,自分の縄張りからも追い払うはずである.人間の場合も親の方から子離れする必要があるのかも知れない.