(第15話 メスが鳴く)
ニワトリは,毎朝木の上の寝床で鳴く.何で鳴くのだろう? 寝ている所で鳴く事は,自分の場所を教えることになり,他の鳥であれば寝床を教える事などしないはずだが,その危険を冒してコケコッコーと大きな声で雄叫(おたけ)びを上げる.私は,これまで納得できる説明,解釈を読んだことがないので自分で考えてみた.
一般に,鳥の鳴き声には地鳴きとさえずりがあるが,ニワトリの雄叫びは,地鳴きでもさえずりでもない.ウグイスがホーホケキョと鳴くのは繁殖期だけで,メスを呼んだり,縄張りを主張したりするためである.ニワトリがコケコッコーと鳴くのは,縄張りの主張であるかも知れないが,メスを横に置いて鳴くことから少なくとも求愛のさえずりではなさそうである.
そこで,雄叫びをする理由を考察してみた.雄叫びをするのは,一般にはオスだけで,地面の上ですることは少なく,朝,寝床にしている木の上や昼間であれば高い所に泊まっている時が多い.これは,安全な寝床に注意を引きつけて,メスのため危険な巣の場所をごまかすため鳴いているものと考えると納得できる.木の上に来る肉食動物は少ないし,いざとなれば飛んで逃げる事ができるので,高い所は,余程安全と思い,外敵の注意を引こうとしているのだろう.実際,夜,木の上でヘビやイタチに襲われることはよくあるが,我が家では殺された事はない.
いつも警戒の目、鋭い目をしている所が,野生の動物とペットの違いだと思っている.その点,チャボは,野生に近い能力を維持している.放し飼いにすると目つきも鋭くなる.特に卵を抱いているときや子供を育てている時には警戒心が強く,一度カラスなどにヒナを取られた経験があると遠くの羽音にも反応を示す.一般的に野生の動物が,自分の寝床や巣を教えるなどとんでもないことである.従って多くの小鳥達は,比較的安全な木の上に巣を作ったり,寝床にしたりし,また見つけることは困難である.しかし,ニワトリは,小鳥と比較して体が大きく,どうせ見つかりやすいなら,メスをかばおう,危険な抱卵中のメスを守ろうと言うつもりに見える.オスの飾りバネなど派手で,メスが地味なことも同じ理由と考えるとさらに納得できる.また,必要ならカラスや小さな猛禽類と戦える強さを持っているので危険を犯すと言ってもそれなりの危険である.ただし,これは,本能であって一番いい方法を考えての行動ではない.こういう本能を獲得した鳥が,結果として生き残っただけであろう.
オスがいなくなると雌の一匹が代わりに朝,コ〜ケコッコ〜〜ではなくて短くコケコッコと鳴く時がある.オスの雄叫びに比べると非常に下手であるが,一応の雌叫び(めたけび)?である.これも卵を抱く時の用心にオスに代わって巣の場所をごまかすためと考えると納得がいく.