(第43話 雄は卵を温めないのに)
ニワトリの雄は決して卵を温めない.なのに,オスが卵を産む所を指示することがある.かといって明らかな巣を作る訳でもない.
こんなことを聞いても不思議に思わない人も多いと思うが,鳥の多くは,オスが,あるいはオスとメスが協力して小枝や泥,草を運んで巣を作ることが多く,明らかな巣を作らない方が珍しい.もちろんニワトリでも卵を産み始めてしばらくすると土の上であれば凹み,草の上であれば巣のように見える.
一方,鳩のようにオスとメスが交代で卵を温める鳥もいるが,ニワトリの場合,卵を抱くのはメスだけである.なのに,メスが卵を産む所を探していると,そんなオスがここで生めと言わんばかりに足で土を馴らしたり,メスのように座り込んで卵を生む格好をしたりすることがある.しかも,この時,冗談のようにメスを見ながら「こっこっこっこ(ここ,ここ)」と鳴く.ウソのような本当の話である.