(第9話 オスの飾り羽だけは濡れる)
<白い飾り羽だけ雨に濡れたブラン>
養鶏場ではメスしかいないし,舎飼(小屋の中で飼う)をしているとニワトリは雨に打たれることはないので,現代社会で濡れたニワトリなど見る機会は極めて少ない.従って,ニワトリの羽には濡れる羽と濡れない羽があることを知っている人は少ないと思う.
それでもニワトリ以外であれば想像できる方もいるかも知れないので,まず,他の鳥で,濡れる羽と濡れない羽があることを紹介しよう.水鳥の羽はいくら雨に当たっても水の中に潜っても濡れないのに対し,スズメなど小鳥の中には雨の後,水で羽がべったり体に付き,身震いをしてはらい落とすものも多い.篭(かご)の中で飼っている鳥の場合,水浴び用の容器を入れておくと周りまで濡らしてしまう.
それではニワトリはどうかというと,メスの羽は濡れない.メスはいくら雨に打たれても水をはじいてしまうので,雨に打たれても軽く身震いするだけで,雨に当たったことなど気付かないくらいである.一方,ニワトリのオスの場合,首から背中までの飾り羽だけが濡れ,飾り羽の付け根の部分や尾羽は濡れない.飾り羽とは,オスの首から背中にかけてある派手な羽で普通の羽より長く伸び,一般的には他の羽と色も異なり,オスを目立たせる.オスだけが派手な色をしているのは,メスと同じように目立たない鳥も多いことから求愛のためではなく,外敵の目を集めることが第一の目的で,結果的にそういう便利のいい派手なオスをメスが好むようになったものと思われる..
鳥の羽には、正羽(Feather)と綿羽(Down)とがあり、正羽の羽枝は、細くマジックテープの様な小羽枝の働きで裂かれても簡単に修復することができる。鳥が羽繕いをするのは裂かれた羽枝を整えるだけでなく、尾脂腺から分泌される油を羽に塗り撥水に利用するためである。なぜ,その飾り羽だけが,雨に濡れてしまうのか、飾り羽に撥水性がないのか理由は分からないが,雨の後のオスは,みすぼらしく惨めである.
参考資料