有機農産物の日本農林規格(案)

 (適用の範囲)
第1条 この規格は、畜産物以外の農産物に適用する。

 (定義)
第2条 この規格において、次の表の左欄に掲げる用語の定義は、それぞれ同表の右欄に掲げるとおりとする。
 
 
用語 定  義
有機農産物            次に掲げるものをいう。
1 農業の自然循環機能の維持増進を図るため、化学的に合成された肥料及び農薬の使用を避けることを基本として、土壌の性質に由来する農地の生産力を最大限発揮させるとともに、農業生産に由来する環境負荷を可能な限り低減した栽培管理方法を採用したほ場において生産される農産物(山菜、きのこ及び樹木の花、葉等を含み、加工したものをのぞく。以下同じ。)のうち、第3条の基準を満たすもの
2.採取場(自生している農産物を採取する場所をいう。以下同じ。)において、採取場の生態系の維持に支障を生じない方法により採取される農産物のうち、第3条の基準を満たすもの
慣行生産 ほ場における有機農産物の生産の方法についての基準に適合しない方法により農産物を生産することをいう。
種苗 趣旨、苗、苗木、穂木、台木その他植物体の全部又は一部で繁殖の用に供されるものをいう。
 (有機農産物の規格)
第3条 有機農産物の生産方法についての基準は、次のとおりとする。
 
 
事項   基  準
有機農産物 転換期間中有機農産物
ほ場等の条件 1 ほ場は、慣行生産するほ場(施肥及び防除が行われる林地、道路その他の土地を含む。以下同じ。)から肥料又は農薬の飛散の影響が生じないように明確に区分されていること、また、水田にあっては、その用水が汚染されていないこと。
2 草地以外の果樹等の多年生作物を生産する場合にあってはその最初の収穫前に3年以上、それ以外のものにあっては播種又は定植前に2年以上(新たに開拓され又は2年以上休耕しているほ場であって、かつ、別表1及び別表2に掲げるもの以外のものが使用されていないほ場にあっては、12カ月以上)の間、ほ場等(ほ場及び採取場をいう。以下同じ。)における肥培管理、ほ場に播種又は定植する種苗及びほ場などにおける有害動植物の防除の基準に基づき農産物の栽培が行われているほ場であること。
3 採取場は、慣行生産するほ場から汚染を受けない一定の区域で、農産物を採取する前の3年以上の間、別表1及び別表2に掲げるもの以外のものが使用されていないこと。
1 同左

2 ほ場等における肥培管理、ほ場に播種又は定植する種苗及びほ場等における有害動植物の防除の基準に基づき収穫前12カ月以上農産物の栽培が行われているほ場であること。

ほ場等における肥培管理 1 土づくり及び適切な施肥管理を通じて土壌肥沃土の維持、・増進を図ることを基本とすること。
2 ほ場等に使用する肥料及び土壌改良資材(当該ほ場における農産物及びその残さを除く。)にあっては、別表1に掲げるもの以外のものを使用していないこと。
同左
ほ場に播種又は定植する種苗 1 有機農産物の規格に適合するものを使用すること。ただし、一般に可能な方法でこれを入手することができない場合には、この限りではない。
2 遺伝子組み換え技術(ある生細胞内で増殖可能なDNA(遺伝子の本体であるデオキシリボ核酸をいう。以下同じ。)と同一又は異種のDNAとの組み換え分子(以下「組み換えDNA分子」という。)を酵素などを用いて試験管内で作成し、それを当該生細胞内に移入し異種のDNAを増殖させる技術。以下同じ。)によって得られたものでないこと。
同左
ほ場等における有害動植物の防除 1 耕種的防除、物理的防除及び生物的防除を適切に組み合わせて実施することを基本とすること。
2 ほ場等に使用する農薬は、別表2に掲げるもの以外のものを使用していないこと。
 
輸送、選別、調製、洗浄、貯蔵、包装等に係わる管理 1 輸送、選別、調製、洗浄、貯蔵、包装等の工程においては、有機農産物とそれ以外の農産物が混合しないこと。
2 輸送、選別、調製、洗浄、貯蔵、包装等の工程に使用する資材は、別表2及び別表3に掲げるもの以外のものを使用していないこと。
3 放射線照射を行わないこと。
4 製品が汚染されないよう管理すること。
 
第4条 有機農産物の品質に関する表示の基準は、名称について次に規定する方法により行うものとする。
 
 
区分   基  準
有機農産物 転換期間中有機農産物
表示の方法               1 「有機農産物」又は「有機栽培農産物」と記載すること。ただし、「有機農産物○○」、「有機栽培農産物○○」、「有機栽培○○」、「有機○○」、「オーガニック○○」、「○○(有機農産物)」、「○○(有機栽培農産物)」、「○○(有機栽培)」、「○○(有機)」、○○(オーガニック)」等と記載し、「○○」には、その最も一般的な農産物の名称を記載することができる。
2 採取場において採取された有機農産物にあっては、「有機農産物」と記載すること。ただし、「有機農産物○○」、「有機○○」、「オーガニック○○」、「○○(有機農産物)」、「○○(有機)」、○○(オーガニック)」等と記載し、「○○」には、その最も一般的な農産物の名称を記載することができる。
1 有機農産物の表示の方法1に定めるところにより記載する名称の前又は後に「転換期間中」と記載すること。

別表1 肥料及び土壌改良資材の使用許可資材リスト
 
 
肥料及び土壌改良資材 基準
農産物及びその残さの堆肥 原料由来が明確で、化学的に合成された物質を添加していないもの。
家畜及び家禽排泄物由来の堆肥 原料由来が明確で、化学的に合成された物質を添加していないもの。
食品製造等由来の堆肥  原料由来が明確で、化学的に合成された物質を添加していないもの。
生ゴミ堆肥  原料由来が明確で、化学的に合成された物質を添加していないもの。
バーク堆肥  原料由来が明確で、化学的に合成された物質を添加していないもの。
魚かす粉末  化学的に合成された物質を添加していないもの。
なたね油かす及びその粉末  化学的に合成された物質を添加していないもの。
米ぬか油かす及びその粉末  化学的に合成された物質を添加していないもの。
大豆油かす及びその粉末  化学的に合成された物質を添加していないもの。
蒸製骨粉  化学的に合成された物質を添加していないもの。
窒素質グアノ  化学的に合成された物質を添加していないもの。
乾燥藻及びその粉末  化学的に合成された物質を添加していないもの。
草木灰  化学的に合成された物質を添加していないもの。
炭酸カルシウム肥料  天然鉱石を粉砕したもの(苦土炭酸カルシウムを含む)。
貝化石肥料  化学的に合成された苦土肥料を添加していないもの。
硫酸加里  天然鉱物を水洗精製したもの。
硫酸加里苦土   
天然りん鉱石  カドミウムは五酸化リンに換算して1s中90r以下であること。
硫酸苦土肥料  ニガリを結晶させたもの又は天然硫酸苦土鉱石を精製したもの。
石こう(硫酸カルシウム)  原料、製造方法が明らかな天然物質又は天然物質由来で化学的に合成された物質を添加していないもの。
硫黄  原料、製造方法が明らかな天然物質又は天然物質由来で化学的に合成された物質を添加していないもの。
微量要素複合肥料  マンガン、ほう素等微量要素の不足により作物の正常な生育が確保されない場合で微量要素以外の化学的に合成された物質が添加されていないもの。
木炭  原料、製造方法が明らかな天然物質又は天然物質由来で化学的に合成された物質を添加していないもの。
泥炭  原料、製造方法が明らかな天然物質又は天然物質由来で化学的に合成された物質を添加していないもの。
ベントナイト  原料、製造方法が明らかな天然物質又は天然物質由来で化学的に合成された物質を添加していないもの。
パーライト  原料、製造方法が明らかな天然物質又は天然物質由来で化学的に合成された物質を添加していないもの。
ゼオライト  原料、製造方法が明らかな天然物質又は天然物質由来で化学的に合成された物質を添加していないもの。
バーミキュライト 原料、製造方法が明らかな天然物質又は天然物質由来で化学的に合成された物質を添加していないもの。
けいそう土焼成粒  原料、製造方法が明らかな天然物質又は天然物質由来で化学的に合成された物質を添加していないもの。
塩基性スラグ  
塩化ナトリウム 採掘された塩のみ
リン酸アルミニウムカルシウム  カドミウムは五酸化リンに換算して1s中90r以下であること。
さらし粉   
木酢液  化学的に合成された物質を含まないもの。
その他の肥料及び土壌改良資材  植物の栄養に供すること又は植物の栽培に資するため土壌の性質に変化をもたらすことを目的として土地にほどこされる物及び植物の栄養に供することを目的として植物にほどこされる物(生物を含む。)であって、天然物質又は天然物質由来で化学的に合成された物質を添加していないもの。

別表2 農薬の使用許可資材リスト
→農薬の使用に当たっては、農薬取締法第12条の6に規定する農薬安全使用基準及び使用方法を遵守すること。
 
 
農薬 基準
除虫菊乳剤  
デリス乳剤  
デリス粉  
デリス粉剤  
なたね油乳剤  
マシン油エアゾル  
マシン油乳剤  
硫黄くん煙剤  
硫黄粉剤  
硫黄・銅水和剤  
水和硫黄剤  
シイタケ菌糸体抽出物液剤  
炭酸水素ナトリウム水和剤  
炭酸水素ナトリウム・銅水和剤  
銅水和剤  
銅粉剤  
生石灰 ボルドー剤調合用に使用する場合に限る。
液化窒素剤  
天敵生物農薬  
性フェロモン剤  
誘引剤  
忌避剤  
クロレラ抽出物液剤  
混合生薬抽出物液剤  
カゼイン石灰 展着剤として使用する場合に限る
パラフィン剤 展着剤として使用する場合に限る
ワックス水和剤  
二酸化炭素剤 保管施設で使用する場合に限る
ケイソウ土剤 保管施設で使用する場合に限る
別表3 調製資材の使用許可資材リスト 表中の調製等資材は、遺伝子組み換え技術により得られたものを除く。
 
調製等資材 基準
炭酸カルシウム  
水酸化カルシウム  
二酸化炭素  
窒素  
エタノール  
カゼイン  
ゼラチン  
活性炭  
タルク  
ベントナイト  
カオリン  
ケイソウ土  
パーライト  
DL−酒石酸  
L−酒石酸  
DL−酒石酸水素カリウム  
L−酒石酸水素カリウム  
DL−酒石酸ナトリウム  
L−酒石酸ナトリウム  
クエン酸  
微生物由来の調製等資材  
酵素  
その他の調製等資材 農産物の輸送、選別、調製、洗浄、貯蔵、包装等の工程に必須の資材であって、天然物質又は天然物質由来で化学的に合成された物質を添加していないもの。