from 2013
「伝統園芸研究会」とは,日本,特に江戸時代を中心に高度に発達した伝統園芸に関する研究会で,2006年に長崎で開かれた園芸学会のシンポジューム「江戸のガー デニング」をきっかけに2013年に始めました.伝統園芸に興味があるという方は案外多いのでこの研究会の内容が興味深くて是非聞きたいという方が多ければ,長くまた盛況に続くものと思っています.運営は集会の案内だけでなく情報交換もメーリングリスト(返信の形で全員に送られる)を用いて行い,園芸学会の小集会の形で開催しますので会費無しの研究会です.小集会は,春は関東,秋は地方で行ない,主として会員による基調講演の他,古くからの品種の収集や栽培,古文献の解読,各地にある古木の研究など情報交換を行います.したがって,いつでも誰でも参加でき,逆に欠席にもこだわらない気楽な集まりにしますので,これから勉強したい方,また来れないことが多そうなことを気にされている方も遠慮なくメーリングリストのメンバーに入ってください.入会希望者は,ttanaka[@]agri.u-tokai.ac.jp へ連絡ください([@]に注意).
次回予定
第21回伝統園芸研究会
アドレス:?
ミーティング ID:
パスコード:
(日本園芸学会令和7年度春季大会の小集会として ):
多くの方の参集をお待ちしています。
内容:基調講演2::タイトル未定(?/? )
内容:講演はパワーポイントで進めますが、画面では資料の文字が見づらいと思われます。資料と講演のテキストを用意いたしますので、参加者にはあらかじめメールでお送りして、当日は紙に印刷して参加してください。
Zoom 会議
コロナのため第14回研究会で、Zoom を使ってみて、スマホか、タブレット(iPadなど)かコンピュータのどれかを持っていれば簡単に参加できることが分かりました。また、演者の方の交通費の負担も考えてオンライン(Zoom 会議)で開催することにしました。
この研究会には参加したいけど Zoom を使ったことがないので参加しなかったという方もいると思います。
Zoom を使ってみて以下のようにメールを出すこととクリックを3回することで参加できることが分かりました。
非常に簡単でした。
(1)このメーリングリストで募集しますので、参加希望のメールを私に返信する。分からない方には、Zoom 担当から電話で指導していただきます。また、企画しますのでご参加ください。
(2)Zoom 担当者(ホスト)からメールが指定の時間に届くのでメールの中の URL をクリックする。→「このページで “zoom.us.app” を開くことを許可しますか? 」と聞いてきますので「許可」(ミーティングIDおよびパスコードなどの入力は必要ありません。)をクリックする。→「ビデオオンで参加」をクリックする。
その後の予定
日時: 2025(令和7)年9月19日 15:00〜18:00
場所:高知大学 〒
基調講演1:タイトル未定(?/? )
基調講演2:タイトル未定(?/? )
日時: 2026(令和8)年3月?日 15:00〜18:00
場所:明治大学 〒 関東
基調講演1:タイトル未定(?/? )
基調講演2:タイトル未定(?/? )
日時: 2026(令和8)年9月?日 15:00〜18:00
場所:京都 (IHC)〒
基調講演1:タイトル未定(?/? )
基調講演2:タイトル未定(?/? )
日時: 2027(令和9)年3月?日 15:00〜18:00
場所:?大学 〒 関東
基調講演1:タイトル未定(?/? )
基調講演2:タイトル未定(?/? )
日時: 2027(令和9)年9月?日 15:00〜18:00
場所:大学 〒 東海・北陸
基調講演1:タイトル未定(?/? )
基調講演2:タイトル未定(?/? )
日時: 2028(令和10)年3月?日 15:00〜18:00
場所:?大学 〒 関東
基調講演1:タイトル未定(?/? )
基調講演2:タイトル未定(?/? )
日時: 2028(令和10)年9月?日 15:00〜18:00
場所:大学 〒 東北・北海道
基調講演1:タイトル未定(?/? )
基調講演2:タイトル未定(?/? )
日時: 2029(令和11)年3月?日 15:00〜18:00
場所:?大学 〒 関東
基調講演1:タイトル未定(?/? )
基調講演2:タイトル未定(?/? )
これまでの集会
第20回伝統園芸研究会
(日本園芸学会令和6年度秋季大会の小集会として ):以前から変体仮名など古書の解読がしたいという方が多く、勉強会を企画しました。
基調講演は奇品研究家の浜崎先生にお願いしました。一般の古書の解読の教室ではなく、伝統園芸研究会の勉強会ですので、奇品研究家の浜崎先生に『草木奇品家雅見』の一部を材料に古書の読み方とその面白さを解説していただきました。
今回は、園芸学会が 沖縄で行われますので演者の方の交通費の負担を考えてオンライン(Zoom 会議)で開催しました。
内容:変体仮名の資料を用いて解読の仕方を紹介しました。田中は、10年ほど前に独学で大蔵永常の本を読み始め、その多くは版本なので文字に癖がなく、ルビが付いているので江戸時代の変体仮名が分かれば読めることに気づきました。変体仮名の表(変体仮名)を使って解読をするのですが、解読できた時にはクイズが解けた時の満足感がありました。会員の中には古書を読める方が数人います。しかし、大蔵永常の本(再種方、再種方翻刻)しか読めない私の方が、導入には良いものと思い、司会進行と合わせて担当しました。基調講演:原書講読・江戸時代の和本読解 『草木奇品家雅見』を読む <永島先生と奇品植物>(浜崎大/奇品研究家 )
内容:江戸時代の園芸書は、現代語とは異なり草書体漢字+変体仮名で記述され句読点もありません。今回は、文政10(1827)年に刊行された奇品植物図譜である『草木奇品家雅見』(天)巻一の永島先生を講読します。 資料⇒翻刻(読み下し文の作成) この段階で変体仮名を現在の平仮名に置き換え句読点もふる ⇒現代語訳 意味を考え現代語に翻訳するという手順で、実際に私がおこなっている翻訳・解釈の方法を実演し、体験してもらうという講演になります。読解ができると、奇品植物とはなにか、永島先生はなぜ奇品植物を愛したのか、奇品植物の同好会である「永島連」を主宰し、植木鉢のデザインまでおこなって鉢植え園芸を江戸から全国に広めた永島先生の功績も理解できると思います。事前登録者10名、当日参加者2名の12名で、松山先生からの投稿を報告とします。
昨日の第20回伝統園芸研究会、参加させていただきました。田中孝幸先生、浜崎大先生、変体仮名で書かれた文書を読むという貴重なレクチャーをありがとうございました。
田中先生は大蔵永常の「再種方」のイネの花の観察のページ(稲花雌雄蕊之図のあるところ)を一文字ずつ読んでくださいました。これは、一説によると日本人が顕微鏡(むしめがね、あるいは、けんびきょう)を使って初めて花粉を観察した記録とのことで金平糖のような形をしている図など興味深かったです。
浜崎先生は、草木奇品家雅見の冒頭に置かれた奇品家のレジェンド、永島先生のページをピックアップして下さり、みんなで読みました。はじめのほうで、奇品家雅見3巻がいったいどんな構成でどのような内容なのか、を解説していただきよく理解できました。文字が読めないことで、どうしても絵図だけを見てわかったような気になっていましたが、奇品家の歴史と現在をたどるストーリーになっているということでした。その「中興の祖」たる永島先生のことばであるとか、縁付(えんつき)」の植木鉢の開発など非常に興味深いお話でした。永島先生は、いろいろな植物を集めていて、1000鉢を超えるコレクションを自ら手をかけて育てていた。その際に、露地で苗を育てるときに畑を区割りして「壺木」として、のちに鉢上げするというお話で、この「壺木」というのは実際にどのような仕掛けをしていたのか、気になりました。
最後に、田中先生からのご提案で、今後、一度、植木鉢についての勉強をしてみようということが話題になりました。たいへん興味深く、ぜひ聞いてみたいです。とくに、私としては、「石台」や「水盤」について知りたく思っておりまして、それは、明治に入って20年代から30年代にかけて、日本のいけばなに「盛花(もりばな)」というスタイルのいけかたが小原流の創始者、小原雲心によって考案され、広まり、近代いけばなの転換点になったと言われているのですが、その最初期には、現在のいけばな用の水盤もありませんので、盆栽用に使われていた浅い器を利用していました。穴を埋めたのではないか、という人も降りますし、水性植物や盆景用に底穴のない容器もあったのではないか、という人もおります。果たしてそういうものは江戸時代にすでにあったのか?「盛花(もりばな)」以前、歴史をさかのぼると、室町時代の花型には「砂のもの」と呼ばれる大型の浅い器に松などをいけて全面に砂を敷き詰めて押さえるようないけかたの事例があり、多くは木製の石台のようなものであったと思われますが、磁器製のものもあったのか? 国内でそれなりに大きさがあって、浅く平たい底の器を焼ける技術はあったのか?そういうことを聞いてみたいと思っております。
第19回伝統園芸研究会
ハイブリッド方式(日本園芸学会令和6年度春季大会の小集会として ):久しぶりのオフラインでの研究会です。ただし、コロナのため Zoom を使った研究会で遠方の方にとって参加しやすいということが分かり、検討していたところ主催者で本研究会の会員でもある乘越先生からハイブリッド方式の提案があり、オフライン(実際に集まる会議)とオンライン(Zoom 会議)の併用をすることになりました。多くの方の参集をお待ちしています。
内容:日本庭園の世界には、飛鳥時代から現代まで、様々な庭園様式が生まれました。平安時代の寝殿造庭園、鎌倉~室町時代の枯山水庭園、江戸時代の池泉回遊式庭園など、いつの時代も、その時代の生活や文化の反映した姿が日本庭園にはみられます。本講では特に、源氏物語が創作された平安時代の庭園の滝石組にスポットをあてながら、日本庭園の伝統と革新にみる心と技を紹介します。基調講演2:厚木キャンパス内ツバキ園の来歴と今後の活用について(現地視察を含む)(東京農業大学 農学部教授/乘越 亮 )
内容他:短時間ですが、当日ご希望いただけた皆様に現地をご覧いただけるよう準備しております。足元の悪い傾斜地ですので、どうぞ動きやすいご用意でお願い致します。
2023(令和5)年の秋季大会は園芸学会百周年記念事業としてアジア園芸学会議(AHC2023)の形で開催するため通常と異なり、小集会はありませんでしたので2023(令和5)年の秋の伝統園芸研究会は行いませんでした。なお、アジア園芸学会議は8月28〜31日に東京大学 (本郷・弥生キャンパス 〒113-0032 東京都文京区弥生1丁目1−1)で行われました。
第18回伝統園芸研究会
内容:雨庭とは、昔からある言葉ではなく、比較的新しい言葉の概念で、都市が邪魔者としてすぐ下水に流していた雨を受け止めて恵みに変え、大雨の災いを和らげ、エコシステムを作り出すための植栽空間を中心としたソルーションだそうです。ただし、このための知恵は、もともと日本の伝統的庭園に詰まっていて、これに触発された様々な現代の取り組みがなされていることを紹介し、NbS(自然に根差した社会課題の解決策)としての雨庭の展開を論じていただきました。基調講演2:ナツメ属の活力:その用途、言語的豊かさ、文化的役割 Vitalidad del género ZIZIPHUS. Usos, riqueza lingüística y papel cultural(エンマ・マルティネイ Emma Martinell Gifre(スペイン語通訳・山田朗子)/バルセロナ大学教授 Prof. Honorífica de la Universidad de Barcelona )
内容:通訳としてバルセロナ在住の山田朗子様にお手伝いしていただきました。まず、ナツメの説明からしていただきました。ナツメは、Rhamnaceae科Ziziphus属(クロウメモドキ科ナツメ属)の植物で、40余りの種があります。このうちZiziphus Jujuba(ナツメ属ナツメ種)は諸説あるものの中国起源とされています(Ziziphus Jujuba(ナツメ属ナツメ種)は 中国語で「Zao」、韓国語で「Daechu」、日本語で「ナツメ」と呼ばれます)。今回の講演では、Rhamnaceae科Ziziphus属のさまざまな種類のなかに、北アフリカ、スペイン、地中海の各地域、あるいは中近東に起源を発するものがあるかを検討し、こうした植物種の他地域への拡散にあたりムスリム商人の交易がどこまで関わりを持ったかという歴史的考察も加えていただきました。それに関連し、スペイン国内には少なくとも三つの言語があり、ナツメはスペイン語で「azufaifo」、カタルーニャ語で「ginjoler」と呼ばれています。また、スペインのメノルカ島(バレアレス諸島)およびバルセロナ市にもナツメの木があり、バルセロナ市内に残された2本のうち1本について保護運動が起こったエピソードもご紹介していただきました。
El género ZIZIPHUS cuenta con cerca de 40 especies. Pertenece a la Familia de las Rhamnaceae (en español ‘ramnáceas’). Nos interesaremos en especial por el ZIZIPHUS jujuba. China se ha atribuido su origen, aunque es un tema pendiente de más investigación (枣) Zǎo en chino, (ナツメ) Natsume en japonés o (대추 ) Daechu en coreano). Nuestra aportación tratará sobre si esta especie u otras son propias de la zona del norte de África, de España, de otroas zonas del Mediterráneo y de Oriente Próximo, y en qué medida se trata del resultado de un viaje favorecido por los árabes. Mostraremos referencias al ‘azufaifo’ (denominación en español), al ‘ginjoler’ (denominación en catalán) en diversas lenguas. También presentaremos su presencia en la isla de Menorca (Islas Baleares) y en la ciudad de Barcelona, donde se produjo una campaña de protección para uno de los dos ejemplares que quedan en la ciudad.
本日は研究会で大変お世話になりありがとうございました。参加者の皆さまにも、温かく迎えていただき感謝申し上げます。エンマ先生そして私からもお礼をお伝えさせていただきます。
初の試みとはいえ前半かなり手間取ったこと、お詫び申し上げます。2人で2台のPCから入ったためハウリングが起こったり、自分の話す声が別のPCから半秒遅れで聞こえて話ができないなど、トラブル続出でした。お話をすすめながら調整したり、エンマ先生にお話しいただく時間を長めにしていただいたり、いろいろ工夫しながらの小1時間となりました。
エンマ先生としては、おわりにたくさんの質問をいただいたことから皆さまに楽しんで頂けたのではないかと考えていらっしゃいます。また、最後にお菓子や楽器の話になり、森本先生が楽器を出してくださったりと楽しかったです。
田中先生の丁寧なご準備と寛大なお誘いに御礼申し上げます。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
山田朗子
第17回伝統園芸研究会
内容:当法人は、京都の歴史文化に関連が深い希少植物(草本類)を「和の花」と呼んで、保全団体、大学、社寺、企業、行政、園芸家など様々な関係者のご協力を得ながら、保全と普及啓発を行っています。秋の七種(七草)の1つで『源氏物語』にも登場するフジバカマ、京都東山の渓流の名に因むキクタニギク、大晦日から元旦にかけて行われる八坂神社「白朮詣り」(をけらまいり)のオケラなどを例に、活動の概要とともに様々な課題についてお話します。基調講演2:阿蘇の草原植物の現状と草原再生(瀬井純雄/NPO法人阿蘇花野協会専務理事 )
内容:阿蘇の草原はその面積が16000haに及ぶ日本の代表的な草原の一つです。ハナシノブやツクシマツモト、ヤツシロソウなど阿蘇だけに自生する貴重な植物や秋の七草に代表されるカワラナデシコなどの草原植物が数多く生育しています。これらの植物は、野焼きや採草など人々の営みと自然の力が釣り合った形で維持されてきた半自然の草原が生育地となっています。しかし、過疎化や高齢化・農業の機械化などによって草原は激減し、絶滅の危機に瀕しています。今回は、阿蘇の草原植物の現状と草原再生の取り組みについて紹介します。
第16回伝統園芸研究会
内容:花屋の立場から花卉装飾の歴史、とくに、戦前から戦後にかけて活躍した第一園芸の永島四郎は、大正前期に千葉高等園芸学校を出て新宿の東洋園芸、アメリカ留学、帰国後に銀座で「婦人公論花の店」を経営、戦後、第一園芸、昭和38年逝去という人物で日本のフラワーデコレーターの第一人者でした。永島氏だけでなく、林基調講演2:富山県中央植物園と中国科学院昆明植物研究所とのトウツバキの共同研究(志内利明/富山県中央植物園 )脩已 というその師 、さらにその師であった福羽 逸人 など明治、江戸末期から明治にかけての接続について紹介していただいた。
内容:中国雲南省の中国科学院昆明植物研究所と富山県中央植物園とは平成8年(1996年)に友好提携を結び、これと前後する形で合計700種類ほどの雲南省産植物を導入しました。これらの導入植物を展示するため富山県中央植物園では雲南の植物エリアと雲南温室を整備し、2000年からは昆明植物研究所と雲南省産植物について共同研究を開始し、ベゴニアやアヤメの仲間、トウツバキなどを主体に進めたそうです。今回はトウツバキの園芸品種と野生種について現地で調査した古木の現況や少数民族との関係、野生種の生育環境などについて概要を紹介していただきました。
第15回伝統園芸研究会
内容:「花の品種改良の日本史」(柴田道夫編、悠書館, 2016)の第2章に取りまとめた「カーネーション」 に沿って、カーネーションの日本への導入、日本自生のダイアンサス属野生種、品種の変遷、改良技術の進歩、貢献度の高かった人物、歴史社会的背景などに触れながら、カーネーションの品種改良の日本史を解説していただいた。基調講演2:三倍体センノウの起源と育種への利用(神戸(ごうど)敏成/龍谷大学農学部 )
内容:センノウ(Lychnis senno Siebold et Zucc.)は600年以上前に中国から渡来したと考えられているナデシコ科の多年草で,和名は京都の嵯峨野にあった仙翁寺に由来すると言われています。日本に現存するセンノウはすべて2n=36の三倍体で希にしか結実しないが,これまでに獲得した自殖後代には様々な形質を持った個体が現れています。種間雑種育成のため,近縁種との交配を行い、胚珠培養を試みていますが,これまでに得られた個体の全てが葉緑体欠損株でした。また,三倍体センノウの起源を明らかにするため,日本および中国原産のセンノウ属植物の葉緑体DNAの解析を行い、その結果,日本に現存する三倍体「センノウは中国に自生する野生種を種子親とする植物であることが示唆していました.
第14回伝統園芸研究会(新型コロナウィルスのため2020(令和2)年3月20日に東京農工大学で予定されていた日本園芸学会令和2年度春季大会および9月11日に岐阜大学で予定されていた秋季大会は中止になり、2021(令和3)年3月20日 にオンライン開催しました。)
内容:現代、園芸の必需品として広く販売されている植木鉢が商品として生産・流通・販売されるようになった江戸時代を中心に述べられました。江戸時代の園芸文化がいかに優れていたのかについて江戸末期に来日したプラントハンターであるロバート・フォーチューンや渡辺京二著『逝きし世の面影』などの資料で説明されました。この講演では、商品植木鉢の登場など日本の園芸文化のあり方に与えた影響がこれまでの文化史研究で見落とされてきたことを述べ、江戸時代の園芸文化の特質を奇品用の商品植木鉢の登場という観点から論じられました。文献だけでなく、現存する古い鉢、江戸染井の植木屋の跡地で発掘された鉢(瀬戸物に穴を開けた転用植木鉢も)、浮世絵など絵に描かれた鉢などたくさんの資料から商品化の考察をされました。有卦(うけ、厄のようなもの)に入る時に筆や福助などの他、福寿草、芙蓉、風蘭、藤など「ふ」で始まる植物やそれを絵にしたものを贈る習慣が江戸時代の絵の中に見られることなど興味深い話題もたくさんありました。基調講演2:バラの軌跡をたどる ― 栽培バラの歴史とその遺伝資源まで -(上田善弘/花フェスタ記念公園)
内容:バラは観賞用のイメージがありますが、何千年以上も前から香料用、薬用に用いられてきた植物だったそうです。バラ属の野生種は南はエチオピア、北はシベリアまで、約150~200種が北半球の亜熱帯から寒帯にかけて広く分布します。野生種のうちのわずか約10種から数万品種ともいわれる多様な栽培バラが育成されたこと、丸弁のオールドローズから剣弁高芯咲きのHT系やフロリバンダ系のモダンローズへの変遷、四季咲き性、黄バラの育成、ナポレオンの皇后ジョセフィーヌ(1763〜1814年)が多くの品種を集めたこと、ブローニュの森のバガテル公園で1905年からバラのコンテストが続いていること、などについて紹介していただきました。バラはフランスなどヨーロッパのイメージがあるのですが、親種の多くは中国、日本など東アジア原産で、上田先生が調査されたイラン、中国の雲南省、新疆ウィグル自治区、ラオスなどを紹介していただきました。日本では1214年の『明月記』に中国のバラが出たのが最初ということでした。
第13回伝統園芸研究会
内容:サクラソウ(Primula sieboldii E. Morren,準絶滅危惧種)は「異型花柱性」であることの基本的なお話があり、春先に明るい広葉樹林や落葉樹林の林床で開花し、短花柱花と長花柱花の間で和合する、マルハナバチが花粉を運んで受精する生活史のご説明がありました。次に、サクラソウの歴史のお話があり、室町時代から園芸品種が登場する江戸時代中期までは、その歴史から第1期から第3期に区別でき、第1期は室町中期の天皇、将軍、宮廷貴族の間で興趣的に栽培が発展したこと、第2期は、これらの者に豪商などが加わり、茶道+生け花、俳諧書に記載、加えて、狩野光信、尾形光琳が描いた障壁画などに花絵が認められるなど、茶道文化と共にこれが発展したこと、さらに、第3期は、江戸中期の柳沢信鴻筆の「宴遊日記」や伊藤伊官衛政武筆の「地錦抄付録」などに絵図が出典され園芸的品種の選抜が始まり、特に、熊谷市久下の荒川河川敷などは、種子が上流から流れて100年ほどかけて群生が成立したこと、などのご紹介がありました。最後に、園芸品種の出現で多様化した花色や模様について、着色に関わる色素合成関連遺伝子の解析や、これらの発現機構を解明するため現在研究を継続中であることが紹介されました。基調講演2:カキ果実の貯蔵特性と産業への展開(板村裕之/島根大/名誉教授)
内容:カキは Diospyros glandulosa, D. oleofera, D. lotusを起源とし、中国雲南省地域が起源地であることが紹介されました。生産量は現在、中国、韓国、スペインに次いで日本は第4位に位置し、カキは、甘柿、渋柿と、完全と不完全の4系統(PCNA, PCA, PVNA, PVA; Pollination-constant, Pollination-variant, [non]-astringent)に分別でき、育種の方向性と方法について、完全甘柿(6倍体で)aaaaaa型を目指して品種改良するが、主として、甘X渋ガキのF1(渋ガキ)に甘柿をBC(1⇒2⇒3)することによって作出する方法が紹介されました。中国では遺伝子型の違うbbbbbb型が開発されていることも付け加えられました。完熟のプロセスとタンニンの脱渋化の説明があり、貯蔵特性としてはクライマクテリック型ではなく、蔕が乾燥し、これからエチレンが生成されることにより果実が完熟する仕組みが説明されました。現在、海外への輸出・輸出促進研究プラットフォーム構築のため電場を用いた氷感貯蔵(Super Cooling System)を検討中で、甘柿、干し柿の海外販売を展開されること、また、産業への応用・社会実装を進めるため「晩夕飲力」と命名された機能性飲料を開発、販売されていることなどの紹介がありました。
内容:サカキ(Cleyera japonica; 红谈比)、ヒサカキ(Eurya japonica; 柃木)は、自宅の神棚や仏壇に仏花としてお供えされる葉物・切り枝であり、これらを生産して消費している国は日本のみであることが紹介されました。 神棚にはサカキ、仏壇にはヒサカキを背当てにした仏花が飾られます。仏花にヒサカキを使うのは、主には東海と近畿で、それらは関西仏花とよばれ、様式が厳密に定められ、高さは35cm程度で全国最小の仏花です。同じ様式で高さが60cm程度のものが墓花とよばれています。一方、サカキが自生していない関東ではヒサカキをサカキと称し、神棚にお供えをしているので、名称と用途が混乱しています。現在、サカキ、ヒサカキとも中国産が90%以上を占め、毎年それぞれ4億本が輸入されています。最近は半完成仏花が輸入され、日本でこれにキク、カーネーション、デンファレなどを加えて完成仏花として販売するようになりました。玉ぐしのサカキはさすがに国産だそうです。サカキ、ヒサカキの販売量は一月約150万束(1束は小枝約20本)で、中国産は安価ではあるが、流通日数が長いので、日持ちが短いといわれています。国内では、サカキ文化、ヒサカキ文化に加え、シキミ文化もあるようで、一部の茶生産農家がシキミの栽培に転換した例も紹介されました。最後に、サカキ、ヒサカキの生産は現在、林産物として扱われており、今後は国内において、丁寧に栽培・生産すべき観点から園芸枝ものとしての生産物として取り扱われることを進めたいと強調されました。
第12回伝統園芸研究会
内容:1 大島公園椿園の説明,2 測量の説明,3 管理システムの説明,4 システム導入の費用,5 システムを活用した管理の今後と発展の可能性, について具体的に説明していただきました.基調講演2:ヨーロッパに渡った藪椿(柄戸正/著述業/「安永の椿」など)
内容:ドイツなど海外生活の長かった柄戸先生によりケンペルやツンベルグの果たした役割などについて現地でのエピソードも含めお話しいただきました.
内容:ツバキ属では母性遺伝を行う葉緑体DNAの分析を行って,ハルサザンカの種子親がサザンカで,したがってヤブツバキは花粉親であることが明らかになったこと,ワビスケの起原にはピタルディが関係し,多くの品種はそれが種子親であったが’胡蝶侘助’はヤブツバキが種子親になっていたことを明らかになったことを説明いただいた.キクの起原は複雑で分子生物学的手法でも親にあたる種を特定することはできなかったが多くの知見が得られたことを説明していただきました.
第11回伝統園芸研究会:第50回「暮らしと園芸を考える小集会」との共同開催
内容:日本で園芸療法が本格的に取り組まれるようになったのは,1990年代のことですが,療法的な農・園芸の活用は1930年代から行われていました.園芸療法の本格的な導入にともなって,全国的に関心が高まるにつれて,さまざまな課題も浮き彫りとなり,要請も生まれてきました.これらを受けて,従来の経済的生産を中心とした園芸だけでなく,暮らしのなかにおける園芸の活用を包括的にとらえることが求められるようになり,園芸福祉という言葉が1998年に提唱されることになりました.このように園芸が生活面でどのようにとらえ,活用されるようになってきたか,その概要を紹介していただきました.基調講演2:日本に自生するヤマアジサイ,エゾアジサイ,ガクアジサイの分布と系統分化(上町達也/滋賀県立大 )
内容:日本にはアジサイ科アジサイ属植物が12種自生しています.いわゆる『アジサイ』として流通しているアジサイ園芸品種の多くは,純粋なガクアジサイ,またはガクアジサイとヤマアジサイの変種であるエゾアジサイとの交雑種と推定されています.ガクアジサイとエゾアジサイは日本の固有種であり,日本や朝鮮半島などに自生するヤマアジサイから分化したものと考えられます.本講演では,日本におけるガクアジサイ,ヤマアジサイ,エゾアジサイの分布状況とともに,地理的分布と系統解析結果から推定されるガクアジサイ,エゾアジサイの系統分化の過程についてご紹介していただきました.
内容:種苗交易の歴史と問題点,あるいは利点について国際法と日本の現状を紹介していただきました.
第10回伝統園芸研究会
内容::トルコギキョウは昭和9年,カタログにキキョウと紹介されて以来,日本を中心に改良が進められてきました.種苗会社により700品種以上ものF1が育成され,産業上,作付け面積や産出額は日本の三大切り花に猛追しています.観賞園芸学研究室では21年間に亘り研究を行い,花色と花弁色素との関係,季咲き栽培と促成栽培による花色変化,キトサン処理による花芽成長等の基礎データを下に,花弁の3種の主要アントシアニジン色素の生合成が少なくとも4つの複対立遺伝子で制御されていることを見出し,これを技術化し育種を継続中です.本講演では,これまでに明らかにした八重咲等の花冠形質を含む,花色遺伝について解説していただきました.基調講演2:常緑性黄色花ツツジ品種作出への試み(嬉野 健次/琉球大)
内容:日本には,およそ40種のツツジ属植物が自生しています.一般にツツジ,サツキと呼ばれている園芸植物は,ツツジ属のツツジ亜属の種同士の交配により成立したものであり,園芸品種群として,クルメツツジ,キリシマツツジ,ヒラドツツジ,リュウキュウツツジ,サツキなどがあります.これらの特徴は,常緑性の低木であり,庭木などに利用されています.花色は白,桃~赤紫,花型は小輪,中輪,大輪,二重咲,八重咲,しべ咲きなど多種多様な品種が存在します.しかし,現在の常緑性ツツジ園芸品種では,黄色花の品種は存在しません.本講演では,これまで取り組んできた常緑性黄色花ツツジ品種の作出への試みに関する研究をまとめて発表していただきました.《見学会》今回は,ツバキ関係の世界的コレクションである岸川慎一郎椿蔵書と研究会で話題になっている磯野直秀氏収集博物学関連文献資料「磯野文庫」の見学会を行いました.
第9回伝統園芸研究会
第8回伝統園芸研究会
第7回伝統園芸研究会:「暮らしと園芸を考える小集会」との共同開催
小集会に先立ち,小笠原先生のご厚意で雑花園文庫の見学会を行いました.参加者の方たちがリクエストしていた28点の資料を準備していただいていました.貴重な資料ばかりでそれぞれ手にとって見せていただき,また,写真を撮らせていただきました.
日時:2016年9月9日(金)12:00〜14:30
場所:雑花園文庫/名古屋園芸(株)内
〒460-0005 名古屋市中区東桜2-18-13
案内:小笠原左衛門尉亮軒先生
Tel: 052-931-8701
参加者は,見学会12名,小集会30名,懇親会10名でした.
第6回伝統園芸研究会
代表:田中孝幸
副代表:細木高志
評議員:青木宏一郎, 上町達也, 嬉野健次, 小林伸雄, 田淵俊人, 仁田坂英二,橋本 文雄, 浜崎大, 半田高
(役員の任期は2016年4月から2年とする.)
また,次回の研究会は「暮らしと園芸を考える小集会」との共同開催とすることになりました.
基調講演1 : ゲノムから見たサクラソウ園芸品種の歴史(大澤良/筑波大)
基調講演2:森鷗外の江戸園芸(青木宏一郎/森林都市研究室 )
講演後,活発な質疑応答が行われ,その後,演者のお二人を囲んで懇親会を10名で行いました.
第5回伝統園芸研究会
第4回伝統園芸研究会
第3回伝統園芸研究会
第2回伝統園芸研究会
第1回伝統園芸研究会
役員名簿
会長:田中孝幸/東海大農学部名誉教授
副会長:細木高志/島根大農学部名誉教授,半田 高/明治大教授,小林伸雄/島根大農学部教授
評議員:青木宏一郎/森林都市研究室,安孫子昌弘/東京都水道局、板村裕之/島根大名誉教授,市川寛明/江戸東京博物館/学芸員、上田善弘/花フェスタ記念公園 、上町達也/滋賀県立大教授,宇田明/宇田花づくり研究所,嬉野 健次/琉球大教授,小笠原左衛門尉亮軒/園芸文化協会,小野崎 隆/農研機構野菜花き研究部門、佐藤正吾/(公財)京都市都市緑化協会・事務局長、久保輝幸/武漢工程大,神戸(ごうど)敏成/龍谷大学農学部、志内利明/富山県中央植物園、執行正義/山口大教授,柴田道夫/東京大学教授、瀬井純雄/NPO法人阿蘇花野協会専務理事、田中実穂/江戸東京博物館,田淵俊人/玉川大教授,仁田坂英二/九州大理学部教授,丹羽理恵/園芸文化協会,橋本 文雄/鹿児島大教授,浜崎大/奇品研究家,松尾英輔/東京農大名誉教授,松山誠/園芸探偵、水田大輝/日本大生物資源科学部講師,森本幸裕/京都大学名誉教授・(公財)京都市都市緑化協会理事長、山本伸一/ 遺伝資源センター、Emma Martinell Gifre/バルセロナ大学教授、加藤友規/ 京都造形芸術大学教授,植彌加藤造園(株)、乘越亮/ 東京農業大学農学部教授
(役員の任期は2020年4月から2年とする.)
基調講演をしていただいた方を評議員に加える。