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(第21話 白い黄身)


 私が,バングラデシュで見た卵の黄身は白っぽかった.毎朝出てくる卵が目玉焼きを作ってもらっても,スクランブルエッグを作ってもらっても白っぽいので驚いた.何となく,美味しくなさそうに見えた.その後,市場に行くと一般家庭には冷蔵庫がないので生きたニワトリが売られていた.ニワトリや卵の大部分は,家で飼っている地鶏(じどり),軍鶏(しゃも),コーチン系などのニワトリからだろうと思った.

 実は,ニワトリの卵の色が餌の影響を受けることは知られている.昔,NHKで信国先生(定年退職)の先輩の九大の先生が赤や青,黄色のカラフルな層構造の卵を作っていたことを思い出した.信国先生に聞いた所,私が見た覚えは大体当たっていた.卵と親和性のあるスーダンレッド(発がん性あり)やスーダンブラックを排卵期のニワトリに交互に静脈注射すると赤と黒と黄色の縞模様の卵ができるそうで,これは,卵の発育を研究するのに役に立った技術だそうである.

 従って,私がバングラデシュで驚いた黄身の白っぽい卵はキサントフィルが少ない餌ばかり食べた結果に違いない.庭や道ばたで見たニワトリは,虫や雑草を食べていてやせていた.飼い主も餌を与えるのであろうが,恐らく残飯を中心で,黄色い色素のものは少ないのであろう.以前,舎飼でトウモロコシなどの餌を与えていなかった時代の日本も卵も白っぽかったのかも知れない.と言うのは,子供の頃,祖父が死んでニワトリがいなくなったので,お店で卵を買うようになり,母が,最近の卵は黄身が黄色くてきれいだと言っていたような気がするからである.ついでだが,牛乳なども餌の影響を強く受ける.昔,某大学の牛乳の味が青臭くなったので聞いてみたら,農場でカブがたくさん取れたので,カブをたくさん食べさせ,その牛からの牛乳であった.しばらくは,カブの味がして美味しくなかったことを思い出した.

 「 黄身返し」もテレビで見た時には驚いた.江戸時代にこんなことをやってみた人がいることに感動した.考えてみれば,始めて 豆腐を作った時も感動した.大豆を臼などでつぶして豆乳を作り,苦汁(にがり)を入れて固める.私には一生かかっても思いつかない.私たちの生活の中には,気を付けて見ていると感動が一杯である.

 さらについでだが,卵の殻の色にも赤いものと白いものがあるが,この違いは,鶏の品種の違いによる.一般に,白い卵は白色レグホーン系の品種が生んだもので,赤い卵はコーチンなどの品種が生んだものである.また,2年ほど前,学生が通販で外国の緑の卵を買って私に孵してくれと頼んで来たことがある.普通の卵よりちょっと緑っぽい卵であった.いろんな卵があるものだ.


 

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