第2回波野プレイリーダー養成研修

〜遊びの達人大集合〜

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<はじめに>


<荻岳に咲くナデシコ>

 2006年8月5,6日に波野の家で第2回波野プレイリーダー養成研修をしました.年賀寄付金の助成を受け,熊本県,熊本市および阿蘇市教育委員会の後援で熊本グリーンヘルパーの会が協力し,緑のまちづくり交流協会が主催したものです.東京からの2名を含め,九州各地から約40名の遊びの達人が大集合しました.

 波野の家に来られる方にはこの家が旅館でなく,来たときよりきれいにして帰ってくださいとはいつも言っているのですが,それでもイベントをするには準備が必要です.7月30日に熊本グリーンヘルパーの方達が掃除などしてもらったものです.学生やたくさんの方に協力していただいてこの研修ができました.


 緑のまちづくり交流協会を今月で引退する園村さんと引き継ぎの丸山さんです.グリーンヘルパーの会は東京の井田さんの企画と熊本の小池会長の実行力で始まったのですが,園村さんがいるから九州各県のグリーンヘルパーの会が成り立っているといっても過言ではありません.本当にすばらしい人です.丸山さん,この後,頑張って!


<竹細工>

 最初にしたのは裏山から竹を切り,竹で箸やスプーン,皿,コップなど食器を作りました.竹とんぼ作りなど竹細工は各県でグリーンヘルパーの方達は子供たちを集めて盛んに行っており,普通の集まりなら誰でも指導者になれるほどです.

 前川さんは,花入れを作りました.

  福岡の内山さんはランタンを作りました.


<野菜の収穫>

 波野の家の共同所有者である木之内農園では家の前の畑で今年から 小玉スイカを作っています.収穫時期にちょうど当たったのはラッキーでした.自分たちで収穫して抜け穴で冷やして荻岳の山頂で食べました.とても甘くておいしいスイカでした.

 秋に行う子供キャンプのためスィートコーンではなく阿蘇地方のトウモロコシ(日本にトウモロコシは長野や群馬県と阿蘇地方)を播種し,サツマイモを挿し苗しました.

 波野はキャベツの産地として有名です.1枚の畑が1haもあるアメリカ並みの畑でキャベツの収穫をさせてもらいました.

 キャベツとダイコン,収穫はどちらが楽か知っていますか?

 ダイコンは抜くだけだから楽と思っている方が多いのではないでしょうか? 抜くのは簡単ですが,洗うのが大変です.球の部分だけを切るキャベツに比べ数倍時間がかかります.


<木登りとロープワーク>

 鹿児島から来た鹿児島グリーンヘルパーの会会長,福ヶ迫さんと岩登りも趣味にしている福留さんは,色んなことができますが,ツリークライミングの達人で指導をしてくれました. 60過ぎのの大人が子供に還って楽しんでいるのをよその人が見たらおかしいでしょうね.ここに持って来た道具は一組で十万円近くします.後で話をしていたら福岡の内山さんは最近倒れかかって危険であった木を一人で切断したそうです.クレーン車などを持って来ても危険な上,大変な費用(見積もりで100万円以上)がかかるものだったそうです.今回も達人がそろいました.「弘法筆を選ばず」と言いますが,達人は道具にこだわります.

 その内山さんは,ロープワークを指導していました.石を移動させるのに結び方で驚くほど軽くなるそうです.女性でも数百キログラムの石を動かすことができるそうです.


<木の実クラフトと花炭>

 木の実クラフトは東京の世田谷から来た斎藤さんが指導してくれました.東京でも森林インストラクターなどとして活躍されている方です.

 持って来た木の実と作品です.流石,東京.作品がおしゃれで,可愛いものばかりでした.

 花炭を作るにはカンに入れて酸素を入れず,ひたすら焼きます.

 色んな木の実を盛りつけます.


<焼き物>

 大分グリーンヘルパーの会会長の高野さんの趣味は焼き物で大分県知事賞を授賞したこともあるそうです.今回は,前日にわらなどで伏せ焼き(素焼き)したものを持って来てくれました.これを竃に入れて焼くだけのシンプルな焼き物に挑戦です.高野さん(左)の手伝いをしているのは福岡の石川さんと西さんです.

 ソバを大釜でゆでましたが,竃(かまど)の中に入れておいたものです.弥生式の土器のようで,しばらくは水がしみ出します.ビールをついでも泡が出ません.高野さんは,もちろん,上薬を塗った高度な焼き物も作れます.

 高度な焼き物で言えば,ソバ打ちを指導してくれた戸田さんのご主人は福岡からの脱サラで波野に移り,阿蘇青々窯を開いています.「窖窯(あながま)」とよばれる古来の窯で、信楽(しがらき)の土、薪には赤松のみを使い4日間高温で釉(うわぐすり)を使用せずに「焼き締め(やきしめ)」という技法で作品を作っています.夜の部では是非波野の家を見たいという阿蘇のカメラマンの方と一緒に参加してもらい,作品を見せてもらいました.


そば打ち

 ソバの種です.「そば」とは,古語で稜角のことを言い,同じように稜角のあるブナの実のことをソバグリとも言います.

 ちょうど種まきの時期でしたので種を播いてもらいました.そば打ちだけをするところは各地にあるのですが,種まきから初めてそば打ちまでするところは遊びの世界では他にないと思います.石臼やくびれ臼,縦杵の説明は私がしました.伝統的な食材や文化まで重要視するスローフードの実践も波野の家の課題の一つです.

 
 前述の戸田さんにそば打ちを教えてもらいました.材料は波野のソバです.波野はキャベツやジャガイモの産地としても有名ですが,波野産というだけで大豆やソバは国産品の中でも特別の評価を受けています.食べたら分かります.


 ゆでるのは鹿児島の本田さんと石川さんの役でした.


<五右衛門風呂>

 五右衛門風呂に入りました.昨年,水漏れがするということでしたが,新道さん(ラジオなどで宣伝する時には「お風呂のしんどう」と言っていますが,名前は「しんみち」さんです)に片道1時間半をかけてわざわざ来て直してもらいました.新道さんは,緑のまちづくり協会とも関係の深い「百年の森づくり」の仲間で,すばらしい方です.彼の話はその内書きましょう! 襖(ふすま)などの修理は,阿蘇でオートキャンプ場「遊牧民」をしている松本さんの本業が建具屋さんで直してもらったものです.色んな方の協力でこの家は維持されています.感謝!


<食べる>

 自分たちで打ったソバを食べました.ソバやゼンマイをついでいるのは熊本グリーンヘルパーの会会長河崎さんです.ご飯は,木之内農園のお米を竃(かまど)で羽釜を使って炊き,裏山の竹を燃料にしました.ゼンマイ,アスパラガス,トマト,キャベツ,ジャガイモ,キムチ,卵,ミョウガなどは,岩下一之進さんや戸田さんが持って来た波野産でした.自給率ほぼ100%を達成しました.

 旧波野村の元村長岩下一之進さんの四方山話です.波野村での昔の生活,オーム真理教との壮絶な戦いなど興味深い話をしてもらいました.波野をどうしたらよくすることができるかを私利私欲無く本当に一生懸命考えている方です.政治家は,こうあるべきだと思いました.

 猟師の田添さん(手前,緑の服)の撃ったイノシシの肉の差し入れがあり,ビールの他は,飲み物も九州各地からの差し入れの焼酎でした.朝の2時まで語っていました.

 鹿児島の本田さんは,元大工さんだったそうで,本田さんの方から「1週間ほど泊まって家の修理がしたい」との申し出を受けました.その内にお願いします.


<天体観測>


 福岡の近藤さんの趣味は天体観測です.モーターで星を自動追尾する20cmの天体望遠鏡(ちょっとした新車1台くらいの値段だそうです)で,天体の話をしてもらいました.木星の4つの衛星もよく見えました.最近は忙しく望遠鏡を持って観察するのは星のきれいな波野に来る時ぐらいなので来るのを楽しみにしているそうです.ありがたいです.月のクレーターもよく見えました.月が隠れ,他の方が寝た後も2時頃まで見ていました.


豆腐作り

 波野では一年中6時になるとカッコウの歌の放送があり,6時半になると拡声器でラジオ体操が始まります.全員起きていました.

 その前に福ヶ迫さんは荻岳に登り,初日の出を見てきたそうです.木之内農園のメンバーも7時には波野に着いてスイカの収穫を始めていました.一之進さんも豆腐作りのため早くから準備をしてくれていたと思います.予定に無かった行事が次々に入るのも波野らしいと思います.

 大釜で煮ます.

 布で漉します.

 豆乳を搾ります.搾り粕は雪花菜(おから)です.

 豆乳に苦汁(にがり)を加えます.

 布を敷いた枠に流し込み,固まるのを待って切ります.手作りで大変美味しい贅沢な朝食でした.


<荻岳登山>

 四方える(843m)頂上で,抜け穴で冷やしたスイカを食べました.

 山頂からは,波野の家の全景が見えました.

 カーネーションやナデシコの仲間のフシグロセンノウ が咲いていました.感動しました.

 コオニユリです.この他,ツリガネニンジンの仲間でナガサキシャジンやホタルブクロも咲いていました.

 荻神社のご神木であるスギの木は,台風で折れるまでは2本杉で,昨年は半分でも大人を含めて12人でようやく囲める大きさでした.なぜか切られてなくなっていました.


<イベントのプログラム作り演習とエコクッキング>

 講義もありました.斎藤さんは「イベントのプログラム作り演習」を行うなど,昨日からフル活動でした.その後,熊本消費者協会会長の田中三恵子さん(写真)によるエコクッキングの講習がありました.フードマイレージ,地産地消など環境に配慮した料理について話があった後,波野でとれたキャベツやジャガイモ,アスパラ,トマトなどと熊本県で育成された世界最大級の鶏「天草大王」の料理でお昼ご飯です.ケチャップも阿蘇岩清水米の吉田さんが作ったもの(どっちの料理ショー?で紹介)を使うなどこだわりました.味付けに使ったごま油は,やや遠く,佐賀県産でしたが,今回は,食べ物,燃料など自給率ほぼ100%を達成しました.今回の研修の隠れたテーマとして,私は勝手に地産地消を考えていました.


<中江神楽>

 舞い手が観客とシロダモの枝を引き合う「柴曵(しばひ)き」です.近藤さんの次男さんが,舞台に連れて行かれ,よい思い出ができました.阿蘇市(旧波野村)中江の神楽殿では,5月から10月まで第一日曜の1時から神楽をしています.波野では,小学生80名の内40名が入っているという人気の部活が神楽部です.最初の演題が「四方礼始」でその子供達が演じました.

 舞い手も奏者も普段はキャベツやトマトなどを作っている近所の農家の人たちで,私たちが食べたトマトは,実は大太鼓を叩いていた佐藤さんからいただいたものでした.

 3番目の題目は「天の〆(しめ)」で,猿田彦が竹に登って餅を撒いています.この役割は,体力が要ります.初めての人だったようです.


<閉会>

 今回も焼き物や豆腐作りなど計画に無かったものも含め,普通のイベントなら立派なメインエベントとなりそうなものがたくさんありました.私は,講師というより,雑用係,カメラマンなどの役割で,「遊びの達人大集合」という副タイトルの通り,参加者こそ,遊びの達人(=講師)ばかりでした.ここで学んだ「知恵」を次の機会に子供たちに伝承できればと思いました. 10月頃,今度は,湯布院で行われるそうです.